先日、かくありたいと思う出来事がありました。
20数年たいせつにしてきた朱肉(以下、旧型)が、いよいよ使えなくなりました。
仕方なく、代替品を購入しました(以下、新型)。
しかし、何かしっくりきません。
新型は、紙の中に染み込んでしまうようで、発色もよくありません。
そこで、旧型と新型の両方を
数件の文房具店に持ち込みました。
新型には不満があり、旧型に近い品物が欲しいということを説明するためです。
いずれのお店も、
「今まで使ってこられたモノは、もう製造されていません」
「現在は、今回購入されたような速乾タイプが主流です」
という回答でした。
納得のいく回答ではありません。
困ったぼくは、
前橋のマチナカにある文房具店を訪れることにしました。
道路が入り組んでいて、普段はなかなかマチナカに足が向かいません。
しかし、以前、万年筆を購入する際に、すばらしい接客を受けた経験があり、他に頼るお店を思いつきません。
残念ながら、前回お世話になったFさんはお留守のようでした。
別の店員さんの目の前で、旧型と新型を実際に押印して、
旧型に近いモノが欲しいと説明しました。
すると、店員さんはすぐに合点がいった様子で、
現在は、旧型をスタンダードタイプ、
新型を速乾タイプ、と呼ぶこと
ぼくが欲しているのは、スタンダードタイプの中でもそこそこ高級なモノであることを教えてくれました。
「このクラスなら気に入っていただけると思いますよ」
と最有力候補を持ってきて、
「よかったら試し打ちしてください」と事もなげに箱を開け、フタを開けてくれます。
お言葉に甘えて、印章を朱肉に乗せた瞬間、
「この感じ。粘りが全然違う。」と直感し、
紙に押してみると、見事な発色。
もうこうなると、値段はどうでもいいんですよね。
「自分のために、ここまで考えて、動いてくれた」っていう満足感。
もう買い物で失敗したくないという思いを、安堵にかえてくれる感覚。
このお店は、「安心」と「信用」を売っているんだ、と思い知らされました。
ふくろう事務所もかくありたいと思います。