民法の改正が検討されており、自筆証書遺言が利用しやすくなりそうです。
自筆証書遺言の方式緩和
現行の自筆証書遺言の方式
まず、
- 全文
- 日付および氏名
をすべて自署しなければなりません。
遺言書の内容を加筆したときや削除したとき(加除訂正といいます)は、遺言者自身が遺言書の中で加除訂正の場所を指示し、訂正した旨を書き足さなくてはなりません。
そして、
- 署名
- 変更箇所に押印
しなければならず、厳格な手続きが要求されています。
このような手続きは、遺言書を書こうとする高齢者等にかなりの労力を強いることになるので、自筆証書遺言の利用が進まない要因であるといわれています。
現行の自筆証書遺言の方式のデメリット
遺言書に1か所でも不備があると、遺言書全体が無効という扱いを受けることがあります。
せっかく自署し、訂正までしたのに、遺言者の意思がまったく反映されないという結果は避けたいですね。
自筆証書遺言の改正ポイント
「財産の特定に関する事項」は、自署でなくてもよい
- 財産の特定に関する事項
- 自署でなくてもよい
1.財産の特定に関する事項
たとえば、建物の場合であれば、
- 所在
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 床面積
預貯金の場合であれば、
- 金融機関名
- 支店名
- 当座・普通の別
- 口座番号
が財産の特定に関する事項にあたります。
2.自署でなくてもよい
- パソコンで書いてもよい
- 代筆を依頼してもよい
ということになり、遺言者の負担を軽減する制度設計となっています。
自筆証書遺言の保管制度の創設
自筆証書遺言を作成した人が「一定の公的機関」に遺言の原本の保管を依頼することができる制度が創設されます。
一定の公的機関
具体的には法務局を指します。
法務局には、遺言書の「紙の原本」に加えて「画像データ」も保管することが想定されているようです。
これは、天災等によって「紙の原本」が滅失してしまうことに対する備えであると考えられます。
保管された自筆証書遺言の検索・閲覧
自筆証書遺言が保管されているか否かの問い合わせたり、遺言書の内容の閲覧請求ができるのは相続人に限定することが検討されているようです。
遺言者の検索や閲覧を請求する相続人は、戸籍謄本を提出して相続人であることを証明することになります。
自筆証書遺言の保管について心配されること
- 保管制度自体に矛盾がある
- 相続人に遺言書を見つけてもらえないおそれがある
- 遺言書そのものが無効になるおそれがある
といったことが考えられます。
1.保管制度自体に矛盾がある
厳重な保管体制を整えている公正証書遺言という方式があります。
公正証書遺言という方式があるにもかかわらず、なぜわざわざ自筆証書遺言を選択するのかというと、遺言書の内容を「誰にも見られたくない」ということに尽きると思います。
(公正証書遺言は、商人2名と公証人の計3名が内容を目にします)
つまり、誰にも見られたくないから自筆証書遺言を選択したのに、遺言書の内容を見られてしまうことになります。(画像データで保管するということは、保存作業する人の目に触れることを意味するに等しいですね)ここに矛盾が生じます。
2.相続人に見つけてもらえないおそれがある
遺言者が亡くなったとき、法務局の側から相続人を捜し出して「自筆証書遺言を保管していますよ」と知らせてくれるような制度設計にはなっていません。
相続人が法務局に問い合わせをして、はじめて法務局は問い合わせに回答する義務が生じるのです。
ですから、せっかく自筆証書遺言を書いて法務局に保管を依頼しても相続人が法務局に問い合わせをしてくれないと、見つけてもらえないというおそれがあるのです。
3.遺言書そのものが無効になるおそれがある
自筆証書遺言の保管を法務局に依頼する際、法律のさだめる方式に適合しているか、形式的なチェックがあるようです。
しかし、方式に不備がなくても内容的に不備があった場合には、遺言書全体が無効という扱いを受けるおそれがあるのです。
上の「現行の自筆証書遺言の方式のデメリット」と同じですね。
結び
遺言者にできること
- 遺言書在書いたこと
- 遺言書の在り処
は、日記など分かりやすい場所に書き留めておきましょう。
せっかく書いても、見つけてもらえなければ効力が発揮できないからです。
家族にできること
- 家の中
- 公証役場
- 法務局
に、遺言書の有無を確認するのがよいでしょう。
遺産分割協議が整ってから、遺言書が発見されても無効とみなされてしまいます。
ふくろう事務所にできること
- 今までの公正証書遺言に加えて、
- 自筆証書遺言を希望される方には、文面のチェック
- 内容を読まれてもよければ、法務局への保管依頼を提案
といったことが想定されます。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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