平成11年法律第150号
第1条(趣旨)
この法律は、任意後見契約の方式、効力等に関し特別の定めをするとともに、任意後見人に対する監督に関し必要な事項を定めるものとする。
第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号の定めるところによる。
① 任意後見契約
委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識することが不十分な状況における自己の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいう。
② 本人
任意後見契約の委任者をいう。
③ 任意後見受任者
第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任される前における任意後見契約の受任者をいう。
④ 任意後見人
第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された後における任意後見契約の受任者をいう。
第3条(任意後見契約の方式)
任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。
第4条(任意後見監督人の選任)
1 任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族または任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する。
ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
① 本人が未成年者であるとき。
② 本人が成年被後見人、被保佐人または被補助人であるばあいにおいて、当該本人に係る後見、保佐または補助を継続することが本人の利益のため特に必要であると認めるとき。
③ 任意後見受任者が次に掲げる者であるとき
イ 民法第847条各号(第4号を除く)に掲げる者
ロ 本人に対して訴訟をし、またはした者その配偶者ならびに直系血族
ハ 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者
2 前項の規定により任意後見監督人を選任する場合において、本人が成年被後見人、被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、当該本人に係る後見開始、保佐開始または補助開始の審判(以下「後見開始の審判等」と総称する)を取り消さなければならない。
3 第1項の規定により本人以外の者の請求により任意後見監督人を選任するには、あらかじめ本人の同意がなければならない。
ただし、本人がその意思を表示することができないときは、この限りでない。
4 任意後見監督人が欠けた場合には、家庭裁判所は、本人、その親族もしくは任意後見人の請求により、または職権で、任意後見監督人を選任する。
5 任意後見監督人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に掲げる者の請求により、または職権で、さらに任意後見監督人を選任することができる。
第5条(任意後見監督人の欠格事由)
任意後見受任者または任意後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、任意後見監督人となることができない。
第6条(本人の意思の尊重等)
任意後見人は、第2条第1項に規定する委託に係る事務(以下「任意後見人の事務」という)を行うにあたっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮しなければならない。
第7条(任意後見監督人の職務等)
1 任意後見監督人の職務は、次のとおりとする。
① 任意後見人の事務を監督すること。
② 任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること。
③ 急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。
④ 任意後見人またはその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。
2 任意後見監督人は、いつでも、任意後見人に対し、任意後見人の事務の報告を求め、または任意後見人の事務もしくは本人の財産の状況を調査することができる。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、任意後見監督人に対し、任意後見人の事務に関する報告を求め、任意後見人の事務もしくは本人の財産の調査を命じ、その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命ずることができる。
4 民法第644条、第654条、第655条、第843条第4項、第844条、第846条、第847条、第859条の2、第861条第2項および第862条の規定は、任意後見監督人について準用する。
第8条(任意後見人の解任)
任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、その親族または検察官の請求により、任意後見人を解任することができる。
第9条(任意後見契約の解除)
1 第4条第1項の規定により任意後見監督が選任される前においては、本人または任意後見受任者は、いつでも、公証人の認証を受けた書面によって、任意後見契約を解除することができる。
2 第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された後においては、本人または任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除することができる。
第10条(後見、保佐および補助との関係)
1 任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる。
2 前項の場合における後見開始の審判等の請求は、任意後見受任者、任意後見人または任意後見監督人もすることができる。
3 第4条第1条の規定により任意後見人が選任された後において本人が後見開始の審判等を受けたときは、任意後見契約は終了する。
第11条(任意後見人の代理権の消滅の対抗要件)
任意後見人の代理権の消滅は、登記をしなければ、善意の第三者に対抗することができない。