成年後見制度とは
成年後見制度は、平成12年(2000年)4月にスタートしました。
近年になって急速に、成年後見という言葉をよく耳にするようになりました。
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などの理由で判断能力が不十分な人を保護・支援する制度です。
判断能力が不十分は人は、預貯金の預入れ・引出しや不動産など財産の管理したり、身の回りの世話をしてもらうために介護保険を利用してサービスを受ける契約をしたり、施設への入所に関する契約をしたり、相続が発生した際に遺産分割協議をすることが難しい場合があります。
また、本人自身の力だけでは正しい選択ができなかったり、自分に不利益な条件であってもそれが判断できずに契約をしてしまい、損害を被るというおそれもあります。
成年後見制度は、このような精神的障害などの理由で判断能力の不十分な人を保護・支援する制度です。
成年後見制度は、大きく法定後見制度と任意後見制度に分けられます。
法定後見とは
法定後見制度は、判断能力の程度など本人の事情に応じてさらに「後見」「保佐」「補助」の3つに分けられます。
「後見」は、精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害等)により、判断能力を欠く常況(判断能力が欠けているのが通常の状態をいいます)にある人に適用されます。
「保佐」は、精神上の障害により判断能力が著しく不十分な人に適用されます。
「補助」は、軽度の精神上の障害により判断能力が不十分な人に適用されます。
成年後見の分類
大分類 | 小分類 | 判断能力 |
法定後見 | 後見 | 欠く常況 |
保佐 | 著しく不十分 | |
補助 | 不十分 | |
任意後見 | 十分なうちに |
成年後見制度の利用者数
大分類 | 小分類 |
平成24年12月 の利用者数 |
平成28年12月 の利用者数 |
4年間 の増加率 |
法定後見 | 後見 | 136,484 | 161,307 | 118.2% |
保佐 | 20,429 | 30,549 | 149.5% | |
補助 | 7,508 | 9,234 | 123.0% | |
任意後見 | 1,868 | 2,461 | 131.7% |
最高裁判所事務総局家庭局より
法定後見制度は、家庭裁判所から選任された成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、本人の利益のために、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自ら法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。
法定後見は、申立権者が書類をそろえて家庭裁判所に対して申立てをして、後見開始・保佐開始・補助開始の審判を受ける必要があります。
また、任意後見がされている場合は、特別の理由がない限り法定後見の審判が受けられません。
任意後見契約が法定後見に優先するという制度設計になっています。
任意後見とは
任意後見制度は、判断能力が十分なうちにあらかじめ契約を結んで選任しておいた任意後見人に、将来、認知症や精神障害等で判断能力が不十分になったときに支援を受ける制度です。
任意後見契約は、任意後見契約書を公正証書にして行います。
任意後見契約を結ぶには
任意後見契約を結ぶときは、公正証書によらなければならないことが、「任意成年後見に関する法律」に定められています。
公正証書は、原則として公証役場で作成することになります。
ただし、本人が公証役場に行くことができないときは、公証人に出張をお願いして、自宅や病院・施設で作成することもできます。
任意後見契約は公正証書によらなければならないとされています。
これは、法律的な仕事に深い知識と経験を有している公証人が関与することで、
- 本人が自らの意思によって任意後見契約を結ぶことを確認する
- 法律的に有効な任意後見契約を結ぶことを確保する
ことを制度的に保証することを目的としているからです。
特に、任意後見では、本人の意思だけでなく、本人に意思能力があることを確認する必要がありますから、公証人が直接本人と面接することが必要とされています。
任意後見契約で決められること
任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約、つまり、任意後見契約を公証人の作成する公正証書によって結んでおくというものです。
任意後見契約は、
- 任意後見人としてだれを選ぶか
- 選んだ任意後見人にどのような代理権を与えるか
- どのようなことをしてもらうのか
を、「本人」と「任意後見人を引き受けてくれる人」との話し合いによって、自由に決めることができます。